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「エミルー!」

「わ!? …なぁに、マルタ」

「よんだだけー」

唐突に抱き付かれることにもすっかり慣れたエミル。

今では一緒になって笑いあい、

「…マルタ」

「なに?」

「よんだだけ」

「……♪」

こうして応えられるまでに成長した。

その雰囲気は見ているだけで幸せになれるというか、

うらやましくて殴り倒したくなるというか、

とにかくそういうものでった。

「ねぇエミル」

「うん?」

「…えと、その…」

やたらとアクティブなマルタにしては珍しい控えめな態度。

何かと思えば、

「お姫様抱っこ、して?」

上目遣い+困ったような笑い+普段よりもうつむきがちな顔=エミルの弱点属性。

人目を気にする羞恥心とやらが深刻なダメージを受けて麻痺してしまった。

「うん、いいよ」

あっさりと承諾して屈む。膝の裏に脚払をかけるように腕を回し、

立ち上がりながら一歩を踏み出し身を翻して背中を支える。

初めてにしては洗練された動きだ。多少かっこつけて無駄になってる部分があるような気もするが。

そのまま何の気なしに腕中のお姫様の顔をうかがう、が、

「「…あ…」」

同時に驚きの声をあげる。

体勢的に、どうしても、

「な、なんか思ったよりも顔が近いね…」

ということである。

すでに大ダメージを受けていたエミルだが、更なる追加攻撃によりオーバーキルされた。

上目遣い+困ったような笑い+うつむこうにもうつむけないことで隠しようのない頬の朱=?



・=快心の一撃が自制という名の急所にクリーンヒット!



言葉を解するのも億劫とばかりに額を重ねる。

疑問符を浮かべた顔で顔をあげたマルタは、しかしそれを口にする前に、

エミルのそれでさえぎられてしまった。





一体何をしているんだ俺は。